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手の外科の歴史について

人類がこれまで英知を養い発展を遂げたのは道具の使用が大きかったといわれますが、その道具を的確に使う役割を担ったのは、前肢(足)から進化した手であります。
ラスコーの洞窟には、噛み潰した果実を吹き付けて描いたクロマニョン人の左手の壁画があります。この時代から‘手’を特別なものとして認識していたことを物語っています。

(ラスコーの洞窟にあるクロマニョン人の女性の左手の壁画.紀元前1万5千年)


石器時代から中世へと‘手’は数え切れないたくさんの道具を生み出してきましたが、手自身の構造は複雑で人々は手自身の障害や病気を治すことができないまま、中世へと進んでいきました。


 (Rembrandt. La lecon d’anatomie du docteur Nicolaes Tulp. 1632. Mauritshuis, La Haye)

 中世ルネッサンスでは、ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチといった芸術家たちは、彼らの芸術の細部に完璧さを求める故に、顔の表情や手・足の皮膚の下に浮かぶ筋肉や血管を忠実に描写しようとしました。その結果、人体の解剖が行なわれ、それとともに‘手の構造’も徐々に解明されてきましたが、これらの現代基礎医学の礎ともいえる彼らの仕事は、芸術と医学の狭間に存在するものでしかありませんでした。



(レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた手の解剖図、
中央にある解説文には彼特有の逆文字)

(逆文字を反転させると・・。‘mano’とはイタリア語の‘手’)



 20世紀に入り手の外科という‘人の手’に外科的な治療を行なう事を確立させたのは、Dr Bunnellです。彼は二つの世界対戦を通じて多くの米軍負傷兵の手の損傷を体験・観察し治療を行ないました。そしてその一つ一つを‘Surgery of the Hand’という本の中に詳細に書き留めました。



Sterling BUNNELL
(1882−1958, born in San Francisco)


 この‘Surgery of the Hand’は、世界中の手の外科医のBibleとされ、彼が近代手の外科の父と呼ばれる所以です。
1970年代、手の外科には顕微鏡が導入され微小外科(マイクロサージャリーとも言います。)が発達しました。再接着(切断された指や足つなぐ手術)や組織移植(足の指を手に移植する事など)などを含む高度な機能再建手術も可能になりました。それまでの腱(スジ)を繋ぐということから、手や腕を繋ぐことができるようになりました。

21世紀に入ると最近話題になったiP細胞などを用いた再生医療(細胞から人の体の一部を作る技術)や人工神経などの開発が行なわれています。現在これらの技術の手の外科への応用に大きな期待が寄せられています。近い将来、皮膚や手や指を失った人がこれらの技術によって失った機能を取り戻す事ができる時代がやってくるという事です。

また近年は医療現場へのロボットテクノロジーの導入が進んでいます。


(ロボットアームを使った手術、欧州手の外科学会, ポーランド、2009,6)



 写真左の黒い突起がロボットアームで、青い服を着た外科医が遠隔操作で数ミリ単位の手術を行なっています。宇宙基地を含む地球上のどこにいても高度な手の手術が受けられるという事です。日本の病院にいてフランスにいるフランス人手の外科医が執刀する日が来るかもしれません。勿論のその逆も。

 

おわりに

 医学の進歩によってそれまで助からなかった命が助かるようになり、治らなかった病気も治るようになりました。たくさんの方が満足のいく生活を送ることができるようになり、今では一人ひとりの生活の質が問われる時代になりました。
手は人の生活、特に高いQOL ( Quality of Life ) を得るためにはなくてはならないものの一つです。その守備範囲は、前述の上肢全体に及び障害も腱鞘炎・打撲・骨折から重篤な障害までさまざまですが、一度障害が発生してしまうと日常生活や社会環境に大きな影響を招いてしまいます。手の障害は、日常の注意や装具をつけたりで予防できるものから薬や注射で治るもの、手術をしなくてはいけないものまでたくさんありますが、そのほとんどは治療によって治すことが可能です。
手の障害でお困りの方やご心配な方はお気軽に一度ご相談下さい。

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